ゴッホという画家

原田マハの『たゆたえども沈まず』を読んでゴッホに興味を持ち、高階秀爾の『ゴッホの眼』を読んだ。高階秀爾の著作はどれも分かりやすいだけでなく文章としても読み応えのあるものだが、本作も例に違わない傑作だった。

 

ゴッホについては、自画像を描くに当たって自ら耳を削いだり、最期にはピストル自殺したりといった逸話レベルでしか知らなかったため、躁鬱傾向の激しい”狂人”といったイメージで単純に捉えていた。そのイメージも強ち間違いってはいないと思うが、高階秀爾が描き出したゴッホは、生きることや愛すること/愛されることに渇望した人物であった。彼は常に、自分の真の理解者を探しながらその不在感を強く感じ、それ故にとても孤独な人だったのだ。まるで砂漠に不時着した飛行機乗りのように、遠くに輝く星々を見てそこに待ち焦がれていた迎えを見出し、錯覚から覚める度に失望と果てしない孤独を抱え生涯を送った人物なのだ。

 

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戦国人にとっての美術

東京国立博物館で開催されている特別展「桃山ー天下人の100年」に行ってきた。戦国時代から江戸時代初期にかけての美術品を一堂に集めた展覧会で、図屏風や茶器、甲冑や日本刀などあらゆる一級品が取り揃っており、非常に満足のいく企画だった。雑感を下に書き留めておく。

 

まず何よりも、戦国時代の美術品は政治・外交の道具であることが窺われた。このことは古今東西に亘って多かれ少なかれ当てはまることだろうが、戦国時代においては明確に、美術品が権力者同士の関係構築や自身の権威化に利用されていた。桃山美術といえば唐獅子図屏風が有名だが、作家達はこのような用途を汲んで、煌びやかであることを志向して創作活動に励んだのだろう。また、甲冑や日本刀などいかにも武将が好みそうなものが美術品に連なっていることもこういった脈絡の上にある。

 

また、これは水墨画や図屏風を見てそう感じたのだが、現代のアニメや漫画はこうした日本美術の伝統を(無意識にも)受け継いでいることを再認識した。現代の(特に日本)アニメや漫画の画法は極端な簡略化・デフォルメが特徴だが、この画法は明らかに水墨画や図屏風のそれと近接している。週刊・月刊紙を通じて消費され、細かいコマ割りで大量の絵を描かなければならないアニメ・漫画にとって簡略化・デフォルメは必要な技術なのだろうが、こうした技術は無意識のもと日本人の頭に染み込んだ水墨画や図屏風の認識方法と相性が良いのだろう。

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手指消毒で失われるもの

COVID-19の影響で「どこに行ってもまず手指消毒」と社会全体が半ば神経症的になっている。もちろん、感染性が強いウィルスを社会全体で食い止めるためには個々人での予防行為が重要な意味を持つということに異論はないが、COVID-19との関わりのみを考えればよいわけではない。私たちの体内には数百兆個の常在菌が存在しており、そういった菌の多様性が免疫や代謝など健康の様々な側面に影響している。COVID-19という眼前の脅威に対して視野狭窄的に対応することがまた別の新たな問題を生んでいないか、改めて考える必要があるようにおもう。

 

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容量市場について

電力の自由化に伴う電力価格低下により、火力や原子力などの従来型発電所採算性が悪化している。太陽光や風力などの再エネ導入が進むことで、それらの従来型発電所を単純に代替すればよいかというと話はそう簡単ではない。電力系統は周波数を一定に保つために需給バランスを保つ必要があるが、太陽光や風力は発電量をコントロールすることができないため、需要量とのバランスをとる調整役が必要とされる。その観点では火力や原子力などの非変動性電源は依然重要性を有しており、電力系統全体で一定の容量を備えている必要がある。そんな中、火力や原子力発電所などにも適切な投資が行われるよう、一定の容量(kW)を確保しておくこと自体に報酬を支払い、事業計画の見通しを立てやすくするのが容量市場だ。容量市場では、入札により容量を募って安い順から落札額を決め、電力小売事業者からの拠出額で賄う。こうすることにより発電による電力の卸売価格の他にも収益源が確保され(主に大手の)電力会社が従来型発電所を維持するインセンティヴが与えられるという仕組みだ。

 

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中国が先頭に立つ、再生可能エネルギー経済の新秩序|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト


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「辞めやすいシステム」の構築が企業の生産性を向上させていく|柳川範之 x 麻野耕司 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

  • 日本企業でのキャリアに不足しているのは、スキルの掛け算よりも各スキルの深堀だろう。
  • 複数種類の職務経験は、ジェネラリスト育成を志向する日本企業ではすでに十分機会が与えられている。
  • 各職能を専門知として掘り下げる経験こそ、日本企業では得難いのだと思う。


「辞めやすいシステム」の構築が企業の生産性を向上させていく|柳川範之 x 麻野耕司 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

トヨタが「聖域」に手をつけざるをえない理由 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

  • EVへのシフトとカーシェアリングが進むと、自動車を「リアル店舗で」「買う」必要性がなくなっていくので、販社をスリム化しておこうとするのは自然な一手だろう。

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