ゴッホという画家

原田マハの『たゆたえども沈まず』を読んでゴッホに興味を持ち、高階秀爾の『ゴッホの眼』を読んだ。高階秀爾の著作はどれも分かりやすいだけでなく文章としても読み応えのあるものだが、本作も例に違わない傑作だった。

 

ゴッホについては、自画像を描くに当たって自ら耳を削いだり、最期にはピストル自殺したりといった逸話レベルでしか知らなかったため、躁鬱傾向の激しい”狂人”といったイメージで単純に捉えていた。そのイメージも強ち間違いってはいないと思うが、高階秀爾が描き出したゴッホは、生きることや愛すること/愛されることに渇望した人物であった。彼は常に、自分の真の理解者を探しながらその不在感を強く感じ、それ故にとても孤独な人だったのだ。まるで砂漠に不時着した飛行機乗りのように、遠くに輝く星々を見てそこに待ち焦がれていた迎えを見出し、錯覚から覚める度に失望と果てしない孤独を抱え生涯を送った人物なのだ。

 

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