戦国人にとっての美術

東京国立博物館で開催されている特別展「桃山ー天下人の100年」に行ってきた。戦国時代から江戸時代初期にかけての美術品を一堂に集めた展覧会で、図屏風や茶器、甲冑や日本刀などあらゆる一級品が取り揃っており、非常に満足のいく企画だった。雑感を下に書き留めておく。

 

まず何よりも、戦国時代の美術品は政治・外交の道具であることが窺われた。このことは古今東西に亘って多かれ少なかれ当てはまることだろうが、戦国時代においては明確に、美術品が権力者同士の関係構築や自身の権威化に利用されていた。桃山美術といえば唐獅子図屏風が有名だが、作家達はこのような用途を汲んで、煌びやかであることを志向して創作活動に励んだのだろう。また、甲冑や日本刀などいかにも武将が好みそうなものが美術品に連なっていることもこういった脈絡の上にある。

 

また、これは水墨画や図屏風を見てそう感じたのだが、現代のアニメや漫画はこうした日本美術の伝統を(無意識にも)受け継いでいることを再認識した。現代の(特に日本)アニメや漫画の画法は極端な簡略化・デフォルメが特徴だが、この画法は明らかに水墨画や図屏風のそれと近接している。週刊・月刊紙を通じて消費され、細かいコマ割りで大量の絵を描かなければならないアニメ・漫画にとって簡略化・デフォルメは必要な技術なのだろうが、こうした技術は無意識のもと日本人の頭に染み込んだ水墨画や図屏風の認識方法と相性が良いのだろう。

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