人間・国家・戦争 国際政治の3つのイメージ
以下は全て本文からの抜粋。
・組織化が進んだ特定の商業利益が弱者より重要とされるような国家では、分散した共同体の利益は、前者の利益の圧力に合致するような政策を追求することになる。
・ 「自然状態から市民国家への移行は、目を見張るような変化をもたらす。人間の行動において正義を本能に代え、人間の行動に以前は欠けていた道徳性を与えるのである」とルソーは言う。市民国家が設立される前の人間には自然の自由があり、人間は自分が獲得できるすべてのものに権利がある。市民国家に入るとき、人間はこの自然の自由を放棄し、かわりに「市民の自由と、自分が持っているものすべての所有権を受け取る。」自然の自由が市民の自由になり、所有が所有権になるのである。くわえて、「市民国家では、人間は道徳的自由を獲得する。そして、このことによってのみ、人間は自分自身の真の主人となるのである。なぜなら、われわれが自らに命じた法の遵守が自由であるのに対し、欲求の単なる衝動は、奴隷であるからだ」。
・国際政治では平時と戦時両方において国家を導く法の支配があるが、それを破る国家があっても、他国は単純にゲームをやめるわけにはいかない。国家は、行動規則を破るほうを好むか、あるいは規則に従って自国の存続を危険にさらすかどうかを考えなくてはならないのである。あるいはより正確には、国家の指導者は、国家の維持のために国際政治において非道徳的に行動するか、国際政治における好ましい行動様式に従うために国家の存続を保証する道徳的義務を放棄するかのどちらかを選ばなければならない。
・血なまぐさい虐殺がひどい光景というのならば、それは、戦争をより尊敬の念でもって扱う理由になるべきである。われわれが持っている刀を、人間性の感情から、次第に切れないものにし、ついに再び誰かが鋭い刀をもってやってきてわれわれの体から武器を奪い取ってしまうような理由になるべきではない。
・おのおのの国家は、いかに定義されようと、自らが最善と判断する方法で自己利益を追求する。アナーキーな状態のもとでは、似通った単位の間で不可避的に生じる利害対立を和解させるような一貫性のある方法、頼りにできるプロセスが存在しないため、軍事力が国家の対外目標を達成する手段となる。国際関係のこのイメージに基づく外交政策は、道徳的でも非道徳的でもなく、単にわれわれを囲む世界に対する理にかなった反応の具体的表現なのである。
なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?
昨今ロジカルシンキング・分析的思考が持て囃されて、書店には関連書籍が並び、多くの大企業でも社内研修が導入されており、世の中はロジカルシンキング・分析的思考礼賛といった雰囲気にあるが、個人的には日本社会により必要なのはむしろシステム思考だと考える。
改善したい要素を排反・独立な形に因数分解して、細分化されたモジュールに対して改善策を講じることで問題解決を図るロジカルシンキング・分析的思考に対して、システム思考は改善したい要素を取り巻く複数の因果関係・メカニズムに注目して、全体感から改善を図る。
ロジカルシンキング・分析的思考とシステム思考の違いを例で説明すると、ロジカルシンキング・分析的思考では、渋滞に対する改善を図る際に交通量と道路の通行可能量に要素分解して道路拡張を改善策として提案する一方で、システム思考では、渋滞に対して道路拡張を図り自動車利用の魅力が高まると交通量が増加して渋滞が起こると考え、自動車利用の相対的な魅力を下げること(例えばバス専用レーンの設置による公共交通機関利用の魅力増加など)を改善策として提案する。
要するに、課題を要因分解してその小単位の個別解決を図るのがロジカルシンキングであるのに対して、システム思考は要因間の相互関係も考慮して全体最適を図るものなのである。丸山眞男が「日本の思想」で指摘したように、問題解決へのアプローチが何かとタコツボ化しやすい日本社会にとって、システム思考は必要な知なのではないかと感じる。
なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方
- 作者: 枝廣淳子,小田理一郎
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